RCサーボの分解整備記録

 

RCサーボの分解整備記録

1. RCサーボとは何ぞや

RCはラジオコントロール、つまりはラジコンのことである。
ラジコンによく使われる形式のサーボなのでRCサーボと呼ばれる。
サーボとは角度や速度を制御できるように作られた装置だ。

長い個人的主張

一部の入門書でサーボはよく普通のDCモータと比較され、モータの1種のように説明されるが、この表現は誤解を招くので好きではない。
サーボはモータの種類というよりは制御装置の種類で、サーボモータはサーボの内モータを使った装置だと明示する表現だ。
特に一般的な(デジタル)RCサーボは、制御IC・ポテンショメータ・ギア・DCモータを1つのパッケージにまとめたものなので、構成要素の1つであるDCモータと比較してモータの1種として紹介するのは、「五目チャーハンは、卵の1種である。」と言っているようで私は好きではない。

2. 分解するRCサーボ

今回は壊れたRCサーボ2個を分解する。



これは観た限りではSG90のコピー品のようだ。
SG90はかなりメジャーなRCサーボで、
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簡単に買える安い小型RCサーボの代表だ。
AruduinoやRasberryPiなどの大体の電子工作入門キットや入門書で登場する。
そのせいでコピー品もいっぱい出回っていて、そうとは知らずに買ってしまったり届いたりおまけで付いてきたりする。
大体のコピー品はモータの軸についているギアが樹脂製だったり、ロゴが入っていなかったり、全体的に作りがあまいので買うなら正規品を買った方が良いだろう。

3. 分解・故障原因調査・修理
早速壊れたRCサーボを分解し故障原因を調べてみようと思う。
出来れば修理してみよう。

3.1 動作環境の準備

RCサーボが動く環境が無ければ、確認のしようがないのでRCサーボを動かせる環境を用意する。
これは、ネットを探せばいくらでも情報が転がっているのでここでは詳細は省き、使ったモノだけを簡単に説明する。
今回は、Aruduino-UNO(R3)とエレキット製のAruduino用シールド(モーター・リレー・ブザー制御入門 [ SU-1204 ])を使った。


Aruduino単体でも動かせるが、シールドを使うと何も考えずにすぐ動作確認が出来るし、Aruduino側とモータ側の電源を分けられるので便利だ。少し残念なのは、基板を調べれば分かることとは言え、回路図が公開されていないことだ。

3.2 1つ目のRCサーボ分解

外見上はなんの異常もないが、動かそうとすると唸るばかりで動かない。
兎に角分解して見よう。
分解は簡単で、4つのネジを外すだけだ。


外すとバラバラになる。
2つ軸があるのが分かる。


小さいギアが付いている方がDCモータ。
付いてていない方がポテンショメータだ。

余談

ポテンショメータは最終段の出力ギアに繋がっていて、出力の角度を検知するためのセンサとして働く。
裏の基板はICが付いていて、(今回はAruduinoからの)信号とポテンショメータの値からDCモータを制御する。

さらに余計な情報

このRCサーボはデジタルサーボなので、ICが付いているがサーボにICは必須ではない。
ポテンショメータさえあれば、(アナログ)サーボを作ることが出来る。アナログサーボはシンプルだが、同価格帯はデジタルサーボに比べてノイズに弱く、精度・保持力・分解能などが劣り、デジタル回路と組み合わせるには結局別にDAコンバータが必要になるので、最近はあまり主流ではない印象。

3.3 1つ目のRCサーボ原因調査・修理

ギアは壊れていないし、配線も切れていない。
ポテンショメータを調べる。
ポテンショメータは、言い換えれば可変抵抗なので、回しながら抵抗値をテスターで調べれば壊れているかどうか分かる。
端まで回すと片側が0Ωになりもう片側が最大値(大体5kΩ)になり、中央にすると両方とも約2.5kΩになった。
つまりどういうことか。ポテンショメータも壊れていない
調べられる範囲ではどれも正常だ。
じゃあICだろうか、そうだとするとお手上げだ。しかし、こういう単純なICはそうそう壊れないものなのだが…。
仕方ないので組み直す。

動く。
…。
まあ、機械あるある。組み直しをすると突然直る。
原因はちょっとした詰まり、ズレ、ゴミ、接触不良などなど。
気付くのも調べるのも難しいちょっとしたことが原因で動かなくなっていたのだろう。
…。
釈然としないが、しょうがない古いグリスを拭いてグリスアップをし直して修理完了。

3.4 2つ目のRCサーボ分解・原因調査

これは原因が分かりやすい。
ギアが割れてしまっている。
動かすと余計壊れるので動かさずにそのまま分解。
割れていたのは2段目のギアの歯と最終段のギアのストッパー部。


どうも無理やり動いてギアが破損してしまったようだ。
ポテンショメータを調べると、端まで回しても中央にしてもテスターはピクリとも動かず。
どうやら故障の原因は、まずポテンショメータが壊れて、その結果モータが限界まで動いた結果ギアを破壊してしまったらしい。

3.4 2つ目のRCサーボ修理

ポテンショメータがが壊れているので直すうま味はあまりないし、寿命なのだが、とりあえず動くようにしてみよう。
ポテンショメータの故障は大概ブラシの汚れだ。IPAで洗浄して接点復活剤を塗り余分な接点復活剤を拭きとればひとまず完了。テスターで動作確認。割れたギアをもう1個のサーボと交換すれば。
動いた。
動くことは確認できたのでギアは元に戻しておく。
修理完了とはいかないが、部品取りくらいには使えそうだ。

4.まとめ・感想

壊れてしまえば部品として交換されることの多いRCサーボだが、中を見れば分かるようにRCサーボ自体もいくつかの部品が寄り集まった機械だ。部品を調整したり交換したりすれば直る。ただ、今回やった方法は(特に2個目のサーボは)その場しのぎ的だ。ポテンショメータの接点の摩耗を考えれば、すぐ壊れてしまうだろう。本当に直したいのであればポテンショメータを交換(もしくは接点を交換)する必要がある。しかし、このRCサーボは1個500円程度だ。ポテンショメータを交換修理するより全体を交換した方が早いし結果的に安くすむだろう。
直せるけど、直さない。なので、別に直し方を知らなくても誰も困らない。
でも直し方を知ってて直さない方が、選択肢が広がる。
機械が好きな私としてはそっちの方が楽しい。


面白いアイデアと、100円均一の安さに感謝してこの文章を終える。
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