何故僕は会社を辞めたのか

 何故僕は会社を辞めたのか

1. 何が起こったのか

少し前の話になりますが、僕は勤めていた会社を辞めてしまいました。
「所謂ブラック企業だったのか?」と問われれば、分かりやすい形ではありませんでしたがそうだったと思います。
様々なものが積もり積もって結局、「ここで仕事を続けても明るい将来が待っているとは思えない。」「こんな仕事やりたくない。」と日々思うようになり。
色々、きっかけもあり会社を辞めてしまいました。
ウジウジと日々、あの会社の事を頭の中で反芻していると、永遠に前に進めない気がするので、ここでドーンと文章にしてしまおうと思いました。
僕の経験が、これから働く人や今働いている人の参考になればと思います。

2. どうして辞めたのか

これが僕が一番言いたい事になります。
言ってしまえば、会社の愚痴です。
僕が働いていた会社は外見上はホワイト企業、内情はブラック企業でした。

2.1.残業が報告できない仕組み
残業が報告できないってどういうことと思うかもしれませんが、残業しても「残業時間を報告するなよ。」みたいな圧力が掛かるのです。結局、報告できない残業に残業代が払われることはない。サービス残業という奴です。つまり、書類上の残業時間はホワイト企業だったのです。
それを誘発していた原因は下記のモノだと思います。
  • 手書きのタイムカード
  • 事実確認を取る仕組みがない
  • 別途提出しないといけない残業届け
  • ノー残業デーだけ厳しい取り締まり
まず、手書きのタイムカードですが、これは文字通り残業時間や勤務時間を30分刻みで手書きしたものです。30分に満たない残業時間は切り捨て、後から書き直せるように必ず鉛筆で記入、必ず本人が記入することになっていますが記載が間違っているものを上司が書き換えても誰も何も言いません。今思えば明らかに違法ですが当時はこれが普通だと思っていました。
ちなみに、会社に入るときには社員証が必要ですし、いつ会社に出入りしたかも勿論確認できますし、遅刻したら記録に残りますし、カギを閉め忘れても誰か分かります。なのに、手書きします。早く会社に行って報告したら残業代が付きますが、先輩たちは早く来ても早めの時間を書いたりしないし、協定を超える残業も誰も書かないので、自分だけ書きにくい雰囲気ができています。
更に、いつ会社を出入りしたかの時間と手書きタイムカードの時間がどれだけ違っても何も言われません。人事部も上司も何も言いません。せっかく本当の出退勤の時間が分かるのに、事実確認を取る仕組みがなく誰も確認しない、もしくは知っていても何も言わないのです。

さらに別途提出しないといけない残業届けが拍車をかけます。協定を超える残業をする場合、偉い人たちに別の用紙を書いて提出しなければいけません。先輩方は「通った事がない。」と口々に言います。提出しにくい雰囲気が強まります。

さらに残業しまくる先輩が僕を阻みます。先輩が残っているので帰りにくい雰囲気を出します。そして、たまに「帰るんだ。ふーん。」とか「もうちょっと頑張れない?」とか言います。もう帰れません。そういう先輩は本来休みの日も自主的に出社します。タイムカードにはもちろん何も書いていません。そして、残業自慢を始めます。もう正直にタイムカードや届け出を出したら、「お前のせいでバレた。」と言われそうな雰囲気です。
出張先だと特に酷くなります。入退社時間の制限も無いし偉い人もいないので、平気で0時まで残業します。そして、それに付き合わされます。その後、残業時間や作業状況の報告をホテルに帰ってからします。残業時間は、先輩に「○○時までってことにしておいて。」と言われます。本当の時間を書いたら先輩はもちろん人事にも偉い人にも怒られそうな雰囲気で、本当の時間なんてとても書けません

だんだんと残業が増え、残業しないのは偉い人が帰れ帰れと急かすノー残業デーだけという状態になります。ノー残業デーの残業はホンの少しでも全て偉い人に届け出が必須だったので事実上不可能でした。今思えば、ホワイト企業アピールでしかなかったと思いますが、それでも定時で帰れるだけで嬉しかった。今考えるとあの時の心理状態は、DV彼氏を「たまに優しくしてくれることもあるんだよ。」と擁護する被害者と同じ心理状態でした。
ちなみに不定期に出勤日になる土曜日もノー残業デーと同じく届け出が必要でしたが、特に早く帰れと急かす人もいないので普通に残業している人だらけでした。もちろん、届け出を出していないので残業代は出ません。

2.2.形骸化した労働組合
一応、労働組合らしきモノがありましたが、ほとんど役に立っていませんでした。どうしてそうなっていたのか。原因は下記のモノではないかと思います。
  • 若手だけで構成されていて発言力が無い
  • 主な仕事が飲み会や旅行の支援や準備
  • 部署ごとの残業時間の大きな差
まず労働組合の中心メンバーは発言権のほとんどない若手でした。傍から見ても取りあえず運営されているだけで、サービス残業の実態やスケジュール管理の杜撰さなどを経営陣に訴えることも出来ず。更に、活動の為に早めに仕事を抜けると、陰で「仕事の方を終わらせてから行って欲しいよな。」などと言う人がいるような始末。

そして、組合が何をしていたかと言えば、殆ど忘年会や新年会の飲み会、レクリエーション大会、スポーツ活動の支援と準備。そして、もちろんそういった会には偉い方々もいらっしゃるわけで、もう偉い人達の娯楽の為にお金を集めて運営しているのではないかと正直思いました。

これまで、残業残業と書きましたが会社全体はそうではなく、部署によっては残業はほとんどなくホワイトな環境だったりします。人事や経理や事務は殆ど定時で帰ります。
しかし、現場で作業して製品を作っている人は帰れません。そうなると不満が溜まっているのですが、残業の少ない部署では大して会社への不満はありません。部署ごとに明らかな温度差がありました。それをなんの考えもなくただ一つにまとめただけと考えれば、一致団結とは程遠い状態だったのではないでしょうか。

僕も最初は現場以外の仕事で残業も少なく大して不満がありませんでしたが、最後は残業だらけで不満だらけでした。最初と最後の状態の差は大きく、それが部署間で起こっていたと考えると温度差があるのは明らかでした。

2.3.スケジュールを管理できない/しない
スケジュール管理しないってどういうことだ思う方もいるでしょう。これが普通でした。なんでそんな状態だったのでしょうか。僕の考える原因は下記です。
  • 残業ありきな無茶な納期
  • 管理職なのに現場仕事
  • スケジュール管理者は自分だけ
納期を「たぶんできるな。」で担当者が向こうの担当者と決めて帰ってきます。どう考えても出来ません余裕の概念が無い人が納期を勝手に決めて帰ってくるのです。上司も先輩も無理だ無茶だと言いますが、もう決めて帰ってきている以上引っ込みがつきません。何とか残業や無理をして間に合わせます。そうすると「できた。」という事になってしまい。ダメな経験が積まれます。
勿論、上手くいかない時もあります。ミスや失敗、自分たちではどうしようもない遅延や問題や遅れが発生します。しょうがないので、謝って少し伸ばしてもらいます。そして、遅れた原因は納期を決めた人ではなくミスした人や外的要因になり、納期を決めた人は何も言われません。むしろ、相手側と一緒に文句を言う側だったりします。
こういう人は、社内では嫌われますが、外部からは「短い納期でやってくれる人」と認識されいろいろ頼まれる、外部や偉い人からすると仕事ができる人になるので現場から文句を言いにくくなります。最悪です。

こういう状況になると時間が無い事を理由に、ちょっとした怪我や労災一歩手前(所謂ヒヤリハット)を報告しにくい状況になり安全的にも最悪です。

管理職が現場で仕事をしているのは、一見仕事しているならいいように思う方もいるかもしれませんが、簡単に言えば役割分担が出来ていない人手が足りていない、というだけの事です。そうなれば、管理職は本来の仕事である業務管理や教育はほとんどできず、目の前の作業で手一杯です。そんな状態なので、誰も全体の状態を把握できておらず、実は予定通りに進んでいない工程があってもその工程の担当以外誰も気が付かないという状態が起こってしまいます。他の人が遅れに気が付いた時には手遅れで、後れを取り戻すために全体の残業が増えます
担当者が連絡を取ればいいのですが、ちょっとでも遅れたら成り立たない無茶なスケジュールで動いている状態では、報告より早く対応しようという気持ちが強く働きます。しかも、皆気が立っているので報告すると大抵怒られます。僕の周りでもバンバン怒られている人がいました。あれでは、怖くて報告できないでしょう。

管理職がスケジュールをたてないので、各々が自分で自分のスケジュールをたてます。そのスケジュールは無茶な納期を守る為に最初から余裕がありません。しかも、自分の仕事しか把握できていない人間がたてたスケジュールなので、周りの進行状態によって、どんどん狂います。そのたびに直しているとスケジュールはパズルのようになり、仕事の合間にできるような状態ではなくなります。仕方ないので、仕事を優先してスケジュールを更新しなくなります。そうなれば、破綻するのは目に見えています。

納期1週間後という無茶苦茶なタイミングでそれまで聞いたこともないプロジェクトのメイン担当にされたこともありました。「他の人に仕事を投げてでも出来たらいい。」とか「何とかしろ。」とか言われますが、できそうな人の手は埋まっているし、何とかする方法は僕が知りたい状態でした。
出来る限り、周りに相談して協力してもらいますが、そもそもが無茶なので、だんだん遅れていきます。もちろん怒られるのは僕と協力してくれた人です。納期を決めた人ではありません。

2.4.誰にも誇れない仕事の出来栄え
残業だらけでも誇りが持てる仕事なら続けられたかもしれません。
しかし、仕事の出来はまったく誇りを持てない状態のモノを度々作ることになりました。
  • とりあえず動けばいい
  • 誰も記録を残さない
  • 誰も責任を取らない
とりあえず動けばいいという言葉を何度聞いたかわかりません。正直、あの会社で作られているものを自分が買いたいかと言われればすぐに「嫌だ。」と言うでしょう。
全てのモノがそうではなかったのですが、無茶な納期で作られたものは大体どこか不安要素があり、担当者が少しずつ隠しているような状態だったと認識しています。
作業を簡単にする治具を先に作ったり、不安要素があれば先に対処できる時間があれば、これから先の作業が簡単になり、それ以降の製品でも楽になるのは間違いありません。納期優先でとりあえず動くものを作っていくと後々首を絞めるのは目に見えています。
実験であればとりあえず動くものでも問題ないとは思いますが、実験で作ったモノをそのまま本番で使ったりするのは、安全や作業の効率を考えてもあまり良い考えとは思えません。

前に作ったのと同じモノなら前回より早く作れるのが、正常な会社だと思います、それが不可能な事態が度々ありました。原因は前回の記録が不完全な状態で保管されていることでした。前回作った時の図面は残っていても、修正した内容や変更した設定内容が記録されていない、結局は前回作り始めた時の状態に情報が巻き戻ってたのです。
折角の楽な仕事が、記録をたどったり前任者から情報を集めたりする時間でどんどん消費されます。
勿論、担当者によっては必要な記録が記録されていて、スムーズに進むこともあったと思います。担当者によって出来に多少の差があるのはしょうがないという気持ちも分かりますが、会社の体制としてはイマイチな部分があったのは間違いありません。
そもそも、余裕あるスケジュールや進行状況の管理がちゃんとできていれば、記録は残されているはずなので、結局は過去の無理なスケジュールが未来の駄目な状態を作り出していたのでしょう。

とりあえず動くものに責任を持ちたい人がいるでしょうか。僕だって取りたくありませんが、とりあえず動くものを要求した人達は自分の言動に責任を持つべきでしょう。とりあえず動かすために確認や作業の効率化を無視して突き進ませたのに、間違いに気づいた時に何の責任も取らずに担当者に全責任を取らせるのはあまりに無責任だと思います。
そもそも、責任をもって送り出せるモノを作っていたらそんな責任のなすりつけ合いにはならないでしょう。作業中は僕も出来るだけ、後から見やすいように直しやすいように気をつかったつもりでしたが、毎回出来上がった時には直したいところが山盛りで、「今回もゴミを作ってしまった。」と後悔しました。とりあえず動けばいいと言っていた人以外は、同じような気持ちだったのかもしれません。
僕が凄く優秀であれば、あの環境でも満足いくものが作れたかもと思うときもあります。しかし、僕にそんな能力はありませんでした。あのまま、責任を持てない作り方を続けるのは自分の良心を傷つけるだけだったと今は思っています。

2.5.その他職場を見限った理由
  • 喫煙所で行われる会議
  • 怒鳴る人たち
  • だんだん無理が出てくる生活
  • どんどん辞める若手・同期
僕自身は煙草は吸いませんが、喫煙自体は個人の自由だと思います。
しかし、ミーティングをするからと無理やり喫煙所に連れ込み、路上で歩きたばこをして吸い殻をその辺にポイ捨てするのは、どう考えてもマナー違反。最後の方は言っても無駄だとあきらめて、ポイ捨てに気が付いたら何も言わずに拾って代わりに捨てていました。
あそこにいた人達は、例え仕事ができていたとしても尊敬できない人達でした。
喫煙者の皆さん全員がそうではないと分かってはいますが、正直に言えば、喫煙者の印象が一気に悪くなりました。

大声で怒鳴る偉い人や上司や先輩が普通にいました。怒鳴らなくても精神的に嫌味を言うタイプの方もいました。それに、やられて精神を病む人まで出る始末。幸いなのは全ての人がそうではなかったことだけでしょうか。
怒鳴られているのが自分ではなくても、気が散り仕事に集中できません

毎日、残業ばかりなのでご飯を作る余裕も、掃除洗濯をする気力もありません。スーパーはもう閉まっているのでコンビニで弁当を買います。とにかく、食事と風呂と睡眠だけは守りました。
そんな生活をしているのでたまの残業が無い日や休日は、気付けば過ぎているか掃除洗濯で終わっています。もともと人付き合いがいい方ではないのに、親戚や友達と会うのが更に億劫になります。
無計画なので出張は突然決まります。準備期間なんてありませんし、出張期間も当てになりません
ある時は、1週間の出張が1ヶ月の出張になり、駐車料金が1万円を超え、冷蔵庫の中身は全滅、燃えるゴミを捨てるタイミングがなかったせいで虫が湧き、部屋の掃除で帰宅した日は終わりました。
出張先では先輩に付き合わされて、外食ばかりでした。奢ってくれる優しい先輩もいますがそういう人ばかりではありません。長期の出張で一緒に行動する先輩が外食ばかりする人だと、気を遣うし、お金はかかるし、良い事がありません。
長期出張先だと、最後の方はいきたい場所もありません。やりたいことも出来ず、近所の公園へ散歩をするか、ホテルで文章を書いたり落書きするくらいです。仕事の道具を運ぶので精一杯で、自分のPCを運ぶような余力がなかったのです。

こんな状態なので、若くてやる気があって能力があればどんどん辞めます。能力が無ければ失敗ばかり残業ばかりの環境で心を病んで辞めていきます
能力はあるものの家庭のある先輩は、辞めることも出来ず、「この職場に未来はない。」と日々呟いている状態でした。

3. 考えた/知ったこと

  • 表向きの情報は良いように改竄されていることがある。
  • 同じ社内でも部署で全然違うことがある。
  • 発言権のない労働組合は何の役にも立たない。
  • 余裕ができたらと、考えていると永遠にその時は来ない。
  • 人が短期間でどんどん辞めるような会社は辞めた方がいい。

4.まとめ・感想

素人なので間違っている点はいろいろあると思います。
なので、こういう風に考える人間もいるという視点で参考にしていただいて、皆さんもよくよく考えていただければ幸いです。

残業中は人がいない場所は省エネの為に電気が消されていました。暗くなっていく会社の中で、「早く終わらせろ。」とか「遅い。」とか罵りが聞こえてくる。幸い、僕自身が言われることは少なかったのですが、それでも気持ちのいい職場では全くありませんでした。
思い出すたびに、嫌な気持ちともっと上手くできなかったのかという後悔が頭をよぎります。しかし、今冷静になってもあそこを辞めたのは正解でした。
あそこでも上手く立ち回れる人は確かに凄い人だと思いますが、僕はそういうスキルや能力は持っていませんでした。その状態で、働き続けていたら僕の体か心が持たなかったでしょう。
個人的に日記を書いているのですが、やはり忙しくなると情報の密度や質は悪くなっていました。読み返すとだんだんと疲れていく様子が感じられる内容で、辞めて良かったと思います。

よりよい環境で生活したいというのは当たり前の気持ちですし、会社や上司や先輩などよりよっぽど優先すべきことだと僕は思いました。みんなが、そう思って行動することで良くない環境は淘汰されるのだと思います。

でも、これで一区切りつけて、過去を無駄に思い返すのは止めて未来の事を考えられるようになるといいなぁ。

仕事を辞めるきっかけをくれた祖母に感謝を述べて、この文章を終わりにします。
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