Quest 2 コントローラーの分解記録

Quest 2 コントローラーの分解記録

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1. Quest2コントローラーの分解について

Quest2のコントローラーのジョイスティックが壊れてしまったので、せっかくなので分解して調査した。どういう技術使われてどういう仕組みになっているのか、どうやって分解したのかについて記録する。


Quest2だけでなくコントローラーのジョイスティックは壊れやすい。
操作中に意図せぬ方向へ、入力が入ってしまう場合、大抵の場合ジョイスティックの物理的な故障である。Quest2のコントローラーの分解やジョイスティックの故障については既にいくつかの情報があるのでそちらも参考にしてもらいたい。
他のサイトにも情報があると思うが、Quest2コントローラーの分解は保証の対象外になる。また、登録修理業者以外の修理は電波法でもアウトである。壊れた製品を分解することは問題にならないと思われるが、分解した製品を使用してはいけない。本記事は、分解した製品を使用することは推奨しない。
どういうことをすると問題になるかや、ジョイスティックの一般的な修理方法については最後に余談として書いたのでそちらを確認してほしい。

ただ、分解するだけではあまり既にある記事と差が無いので、本記事ではジョイスティックのモジュール自体も分解する。
また、Amazonで交換用部品として売られている部品を購入したので、そちらも分解して調査した。調査したのは下記の物である。


2.分解に必要な道具

主に私が分解に使ったものを紹介する。
残念ながら、いくつか現在入手性の悪いものもあるので、その場合は使えそうなものを参考として提示する。

・特殊ネジ(トルクス)のドライバー(T4必須 できればT5も)
T4があれば、すべてのネジが回せるが、2本を除いて少しゆるいのでT5もあれば嬉しい。
また短いドライバーだと、柄が当たって回しにくい箇所があるので、もともと軸が長いか延長できる物、軸を自在に曲げられる物が好ましい。

下記は私が使っている物だが、現在Amazonで取り扱いが無い、また楽天だと高い。
楽天 53in1 精密 特殊 ドライバーセット +−トルクス 星▲Y DIY HDD スマホ 携帯 ゲーム機 ノートパソコン
参考(使えそうなもの)
Amazon 

オープナーとピンセット(必須ではない。)
オープナーやピンセットがあれば、作業はしやすいが必須ではない。
特にオープナーは、下敷きや定規やマイナスドライバーやギターのピックなどでも十分代わりになるので、それらがあれば代用したのでよい。
オープナー
長いものは買ったもので、両方にそれぞれ形状の違う金属製のヘラがあり、隙間に差し込むのに重宝する。短いものは何かに付属していたもので、握りが短いので握りこみやすく、硬いときに重宝している。
ピンセット
先端の細いものが大体の場合使いやすいので、オススメ。ただ、フラットケーブルやシールなどを扱うときは先端が平たいものの方が保持しやすい。

3.分解作業


できるだけ、読みながら作業できるように書いていたつもりだが、少し先まで読んで作業した方がやりやすいかもしれない。また、要所で注目ヵ所も紹介する。

3.1. パネル

パネルは、両面テープとはめ込みで留まっている。
下の写真のように隙間からオープナーなどでこじ開けながら、両面テープを切ると開けられる。右も同様である。

3.2.パネル下

パネル下には写真のようにネジが9本ある。左右で位置が入れ替わっている以外は同じである。
どれもトルクスドライバーで外せる。緑丸だけT4でそれ以外はT5で外した。
赤〇:T5 長さ 5㎜  4本
赤△:T5         1本 (抜けない) 
黄〇:T5 長さ10㎜ 1本 (色が黒い)
青〇:T5 長さ17㎜ 1本 (半ネジ)
緑〇:T4 長さ  4㎜ 2本

赤〇

赤△ 写真のように抜けずに残る。これで正常なので気にしない。

黄〇 これだけ色が黒い

青〇 半ネジになっていて、ネジ山が無い部分がある。

緑〇 これだけT4

下記写真のように回すときリングが邪魔になって回せなかった。

下記写真のように曲がる軸を使った。

静電容量センサー
ここまで分解して、下記写真の赤丸で囲ったバネが何のための物か。パネル側をみるとバネに接触するように金属の板がついている。これは、おそらく静電容量センサーである。金属の板とバネは電池と電池ボックスのバネのように電気的に接続されている。この板の近くに人体(指)が近くと、人体の静電気によって板の電位が変化する。
これによって、この板の上に指があることを検知できるという仕掛けである。

3.3.電池ボックス部分

シールを剥がすと、写真のように左右それぞれ3か所のネジが見える。また、穴の奥にも1か所ある。 左右それぞれ4か所ある。T5のトルクスドライバーで外せる。(T4でも可)
すべてパネルの赤丸のネジと同じもので、T5の長さ5㎜だった。

3.4.リングカバー

下記写真のように、赤矢印部分を押し込む。

リングカバーに隙間が出来るので、オープナーなどで両面テープを切りながら開いていく。
この時、LEDなどが実装されたフレキシブル基盤(FPC)が中にあるので、傷つけないようにする。あまり奥まで差し込むと、基板に当たりそうだった。


リングカバー全周を外し終わると、下記写真のようになる。ここから少し外しにくい。
ここで無理をすると、リングや基板が痛みそうなので注意する。

外し終わった後のリングカバーの内側の様子だが、赤矢印の穴にカバーの突起が刺さっている。

上記写真を参考にして、突起を穴から外す。

位置推定の仕組み

外した様子は下記写真のようになっている。
赤丸で囲んだものはLEDで、リング内側のフレキシブル基板に実装されている。
1つは電源が入った事を知らせる白色のLEDで、それ以外は赤外線を発するものだ。
これは、コントローラーの位置推定に使うもので、LEDが発した赤外線をQuest2が捉えて、コントローラーの位置や向きを割り出している。詳細は分からないが、恐らくそれぞれ別の発光パターンをしているのだと思われる。

3.5.持ち手部カバー(内側)

カバー部は下記写真の紫矢印で示した突起に、赤矢印で示した穴をはめ込む形で固定されている。青矢印方向に隙間を広げながら突起を外せば、オレンジ矢印方向に1つ目のカバーが外れる。

2つ目の中指のトリガーが付いたカバーは赤矢印で示した突起で留まっている。隙間からマイナスドライバーなどでこじって外すしかないが、ここが非常に脆い

私は下記写真のように、折ってしまった…。簡単に付け外し出来るようになったので、作業性は良くなったが、気分が落ち込んだので、折りたくない方は十分注意されたし。

突起を外せば、1つ目カバーを外すときに示した青矢印方向に引けば、下記写真のように、外れます。

3.6.持ち手部カバー(外側)

フラットケーブル(フレキシブルフラットケーブル:FFC)をコネクタ(FPC/FFCコネクタ)から外す。そのままでは、引っ張っても抜けない。
FPC/FFCコネクタにはストッパーがある。写真の赤矢印で示した黒い板状の部分。
ここを起こすとストッパーが外れる。このコネクタは部品が小さいので壊れやすい。今回は壊さなかったが、以前同種のコネクタを壊してしまったことがある。ピンセットでもマイナスドライバーでもよいが、竹串など柔らかいものでやると安心だ。

ストッパーを起こすと、コネクタからフラットケーブルが抜けるようになるのでピンセット等で抜く。

後は下記写真の赤丸部分がはまっているだけなので、青矢印方向に引っ張れば外れる。

外れた様子が下記写真。

トリガーの動作原理

ここまで外すとトリガーが良く見える。
トリガーは人差し指と中指のどちらも基板にも接触していない。トリガーには磁石が付いている。この磁石の磁気を基板側の磁気センサー(おそらくホールセンサー)で感知している。なので、直接接触させることなくトリガーの位置が検知できる。


3.7.トリガー

トリガーはピンで留まっている。バネがあるが、基板に抑えられいるので飛ぶ心配はあまりない。
下記はピンを外した後の写真だが、ピンは青色矢印の方向から押して外す
紫方向から押すと、赤矢印で示したフレキシブル基板を破損させる恐れがある。最初間違えかけて、非常に危なかった。

ピンを押す場所は下記写真の赤矢印で示した場所だ。

下記写真のようにドライバーなどで押して抜く。固いが、あまり力を入れると勢い余ってヒンジを壊しそうになる。私は壊しそうになった。


3.8.メイン基板

ついにメイン基板だ。外す場所を下記写真で示す。
赤枠で囲った場所が、コネクタ(FPC/FFCコネクタ)
青矢印で示した場所が、アンテナ線
赤丸で囲ったのが、トルクスネジ

上記赤枠で示したコネクタ(FPC/FFCコネクタ)のストッパーを起こして、フレキを引き抜く。
下の二つのコネクタは、リングのLEDなどが実装されたフレキシブル基板。
中央付近のコネクタは、ジョイスティックのユニットから延びるフレキシブルフラットケーブルだ。

上記青矢印で示したアンテナ線がつながっているコネクタを外していく。
まずは、基板上側のコネクタを外す。マイナスドライバーかペンチなどで基板に対して垂直に力を加えれば外れる。下側も同様に基板に対して垂直に引っ張って外す。

上記、赤丸で囲ったネジは黒色のT5のトルクスネジで長さは6.5㎜で、4本である。

ここまで済めば、メイン基板が外れる。

パネル分解時に触れた、静電容量センサー用と思われるバネが良く見える。また、ボタンにもバネが巻かれているのが分かる。これも静電容量センサー用のバネだと考えられる。これのおかげで、ボタンが押されていなくても指がボタンの上にあることが検知できる

確認用に、外したネジを下記写真に示す。
ネジが全部で16本とピンが1本


3.9.ジョイスティック

ジョイスティックの指で触る部分は、本体の軸に刺さっているだけなので引っ張ると抜ける。また、バネ部分もバネに付いた金属の板が、ジョイスティック本体に被さっているだけなので簡単に外せる。このバネはよく似ているが左右で違うようなので、元に戻したいなら注意する。一応R、Lが刻印されているので混ざってしまっても確認はできる。

ここまで分解すれば、ジョイスティックを交換することも可能だ。今回は仕組みを調べるのが目的なので更に分解する。下記写真の赤矢印で示した4つの爪を、写真のように起こす。そして、青矢印で示した留め金部分をマイナスドライバーで外すとジョイスティック本体が開く。中にバネがあるので、飛ばさないように注意。

分解後の部品一覧を下記写真に示す。

①カバー(プラスチック)
②バネ
③駆動部①
④駆動部②
⑤スティック軸
⑥バネ受け
⑦軸受け
⑧スライダー×2
⑨フレキシブル基板
⑩カバー(金属)

分解直後はこのような状態になっている。

バネを外すと、バネを受けているリングが見える。

リングを外す。駆動部がそれぞれのスライダーと連動している様子が分かる。

軸受けを外す。

スティック軸と駆動部②を外す。駆動部②は写真の右側のスライダーと連動していたことが分かる。駆動部①は下側のスライダーと連動している。写真の左右方向に軸動かすと、下のスライダーが、写真の上下方向に動かすと右側のスライダーがスライドする。

駆動部①を外すとスライダーだけが残る。

ジョイスティックの仕組み

小さくて見えにくいが、赤矢印で示した先端はそれぞれ二股に分かれており、丸く曲げられている。その先端が、フレキシブル基板の写真赤丸部分に接触する。この黒い部分は恐らく、カーボン被膜のように見える。カーボン被膜は電気抵抗になるので長さに応じて抵抗値が変わる。スライダーが移動するとカーボン被膜場を電気が流れる長さが変わる。それを利用して軸の動きを検知する仕掛けだろう。
フレキシブル基板の写真で、フレキシブル基板の右下に見える銀色の丸い部分はスイッチである。写真で見えている面は金属板で出来ていて、押し込むとへこむ。おそらく反対面に接点がありそこと接触するのだろう。

上記の写真の赤丸部分をよく見ると、擦れた後だろう2本の線がある。最初からあるものなのか、汚れなのか確認したい。IPAで拭いた。
そうすると、下記写真のように線が消えた。やはり、長時間利用したことによる汚れの類だったようだ。こういった汚れは誤動作の原因になりやすい。最近のジョイスティックはトリガーで紹介したように磁気センサーを使っているものもあり、そういったタイプでは擦れる部分が無い為このような不具合は起こらない。(経年劣化で磁石の磁気が弱くなると検出位置がずれる可能性があるが、キャリブレーションで対応できるだろう。)
整備するのであれば、上記写真の赤矢印部分と赤丸部分をIPAかパーツクリーナーで洗浄し、乾かした後、接点復活剤を同じ個所に塗布すれば回復するだろう

逆手順で組み立て直した後、爪を折り曲げて、元の状態に戻した。
金属なので、あまり何度も開閉をすると、金属疲労で折れそうだ。当たり前だが、整備性については考えられていない。

ジョイスティック互換品の検証

最初にも書いたが今回、Quest2コントローラーのジョイスティックの互換品を歌う商品を買ってみた。
外観はプラスチックの色が違う以外にも、結構差がある。

これも、純正部品と同様に分解してみる。分解方法はほぼ同じである。
爪の折り曲げ方向が違う。個人的にはこちらの方が、応力の方向的に頑丈そうに見える。また、曲げ量が少ないので、金属疲労も少なそうだ。

分解すると中身は下記写真のようになっていた。純正と比べると、軸の押さえが省略されている。また、フレキシブル基板を見ると、カーボン被膜が片側だけになっている。それ以外はほぼ同じ構造だ。コスト的には純正より良くできていそうだ。
材料的にどうなのかは分解だけでは分からないので実際の耐久性はよくわからないが、構造だけ観れば同程度かそれ以上の耐久性がありそうだ。

他でも同様の製品が売っている。
Amazon
こちらは交換に必要な工具とセットになっている。写真が正しければ、部品自体は同じモノのようだ。工具とのセットと考えれば結構安い。

楽天

写真で見た限りは同じ部品のようだが、Amazonより値段が高い。


4.組立作業

逆手順で元に戻していく。注意点だけ軽く触れていく。
は刺した後、ストッパーを閉じないと接触しない。

トリガーを戻す際、ピンが上手く刺さらない。バネが引っ掛かっていた。
ジョイスティックがある面側から、トリガーのピンやバネの位置を調整することで刺さった。

中指のトリガーまで戻した状態。
ここまで戻せば、電気的には元通りだ。電池を入れれば動くだろう。
今回は、動作確認はしないが動作確認をするならこの状態だ。

ここまでで失敗しやすいのは下記の2つだ。
・アンテナ線のコネクタが刺さっているか?
コネクタ(FPC/FFCコネクタ)のストッパーが閉じているか?

確認出来たら、カバーを戻してネジを締める。
パネルも戻せば、組立終了だ。

5.まとめ・感想

今回は壊れたQuest2のコントローラーを分解して、中身を調べた。
少し破損してしまったが、おおむね問題なく分解して元に戻すことができた。
当たり前といえば当たり前だが、分解修理をすることはあまり考えていない作りだった。
簡単にだが、コントローラーの仕組みも見ることが出来たので満足だ。
Quest3やProではリングが無くなっているので、中身もかなり変わっているのだろう。
Proでは代わりにカメラで自己位置推定をするようなので、Quest3もそうなるのだろうか。
もし、また機会があればこのような記事を書いてみたいと思う。

以上、素晴らしい製品を世に送り出してくれたOculusに感謝を捧げてこの文章を終わる。


余談

無線機器の分解しても良い場合、駄目な場合

Questコントローラーは1つの製品として技適に通っているので分解してはいけないが、ユニットが技適に通っている製品は、ユニットを分解しなければ他は分解しても問題はない。電子工作などで使える無線モジュールやPCに後付けできる拡張基板などは後者である。

一般的なジョイスティックの修理方法

一般的なジョイスティックの修理方法として、主に3つのパターンがある。
  1. 接点復活剤やパーツクリーナーを隙間から吹き付ける
  2. ジョイスティックの部品交換
  3. ジョイスティックの部品清掃
保証期間内であれば先にメーカーや代理店に連絡した方が良い。また、お金があるなら新しいコントローラーを買った方が良いだろう。
あえて言うなら1番は保証以外ではあまり問題になりそうにない。2,3番は分解するので先を書いたように今回のQuest2コントローラーのような無線式のコントローラーではやってはいけない。また、Quest2コントローラーのジョイスティックのようにモジュール化されている場合はハンダの必要はないが、はんだ付けされている場合、ハンダを除去する必要があるので難易度が高い。下記でそれぞれを比較する。

1 接点復活剤やパーツクリーナーを隙間から吹き付ける

簡単だしそんなにお金もかからない。ただし、直らない時もあるし、パーツクリーナーや接点復活剤はプラスチックを犯す場合があるし、塗布しなくてよい場所にも塗布されるこの方法はコントローラー内部が汚れるのであまり好きではない。
必要なモノ
スプレータイプであれば、どこのメーカーでも問題はないだろう。(プラスチックを犯すものでなければ)
接点復活剤とパーツクリーナーどちらにするかだが、おおよそ接点復活剤単体で問題ない。
2回目以降で接点復活剤を吹き付けても直らなくなったらパーツクリーナーで一度洗浄した後、再度接点復活剤を使う。どちらにせよ、あまり大量に使うと別の問題が起こることが予想されるので、注意されたし。下記は私がよく使うもの。
・パーツクリーナー
楽天 KURE エレクトロニッククリーナー(380ml) 3012 電気 電子パーツクリーナー
・接点復活剤(スプレータイプ)

2 ジョイスティックの部品交換

交換用の部品を入手する必要があるので、3つの中では1番費用がかかるかもしれない。しかし、成功すればほぼ間違いなく新品と同じ動作になる。再発の可能性も1番低い。しかし、個人で入手できるパーツは純正ではないので、パーツの品質にはバラツキがありそうだ。

3 ジョイスティックの部品清掃

扱う部品が細かいので、3つの中では1番難易度が高い。Quest2のように分解可能でなければ、そもそも実行不可能である。それでも、塗装無しのプラモデルの組立程度の難易度である。修理後直るかは2番より不確実で、1番より確実。道具を持っていれば、必要な費用は2番より安い。他2つの真ん中な立ち位置である。交換部品が手に入らない場合は有効だ。下記私がよく使うもの。
必要なモノ
・IPA(パーツクリーナーでもよい)
私はIPAを使うが、パーツクリーナーの方が使い勝手が良いのでIPAを持っていないなら、パーツクリーナーを準備する方が良い。私は下記の容器に入れて使用している。
・接点復活剤(刷毛タイプ)
分解清掃する場合、刷毛タイプの接点復活剤の方が使いやすい。好みの問題なので、スプレータイプの接点復活剤でもよい。
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